支援会話 ヒース ルセア ニノ ラガルト ジャファル 超短編その一 超短編その二

支援会話 マーク×ヒース

「君がこの舞台の軍師かい?」
「!!」
「あ…すまない、いきなり話しかけて。俺は元ベルン竜騎士団のヒースだ。訳あってここで戦うことになった。つまり味方だ。この軍の采配は手際がいいな。これからもよろしく頼む」
「ええ…どうも、ありがとう」
「ところで、何か俺にできることはないか? 前線での戦闘なら俺みたいなやつに任せてくれれば…」
「向こうの偵察を…」
「わかった。行ってくる。君も気をつけてくれ」
「ええ、ありがとう。……行ったか…。
  あの人は違うのに…まだ…あ、あの目…覚えてる…」


「マークさん!」
「?! な、何?」
「さっき囲まれていたようだが、大丈夫かい?」
「平気です」
「でも顔色が悪いような…本当に平気なのか?」
「…別に、問題ないです…」
「…俺にはとてもそうは見えない。震えてるじゃないか。こいつの背中に乗ってくれ。後方まで送っていくから」
「違う! そんなんじゃ…!」
「?」
「あ…違う………
 手はいりません。自分で、乗れますから…」
「マークさん?」
「……」


「ヒースさん、この前はありがとうございます」
「ああ、礼を言う必要はない。でも十分気をつけてくれ。女性が戦闘で負傷しては、騎士として面目が経たないからな」
「そんな、女性なんて…」
「初めて笑ってくれたな」
「…変ですか?」
「いや、そうじゃないんだ。ただ、俺と話す時だけ下を向いて目も合わせないから、何か悪いことをしてしまったのかと…」
「今日は、そのことを話しておきたいと思って来ました」
「え?」
「実は私、普通の家庭に育たなかったものですから、身の危険を感じることは結構あったんです。それまでは辛くとも私なりに幸せでした。でも、ある女の出現によって状況は一気に悪くなって…やっぱりこれ以上付き合ってはいけないと判断した両親が、私を連れてその組織を脱退しました」
「マークさん、それは…」
「そして、粛清の追手が向けられ、私達は散り散りになって殺されかけた…。ヒースさんと似た、金色の目の人でした」
「だから…なのか?」
「ええ。その悪い人達と私達は、表向きは何事もなく振舞ってたけど、影で対立してたんです。だから命を狙われてもおかしくないのに……悲しかった。敵対勢力ではあるけど、殺すことはないだろうと信じてた。 …甘いですね。敵とわかっている相手に油断して、追い落とされた」
「今まで…マークさんのそんな事情も知らず、俺は黒い牙を…」
「いいんです。でも誰にも言わないで下さい。一応秘密ですから」
「わかった。俺も祖国から追われた身だ。その痛みは知っている。決して口外しない」
「頼みますよ。…じゃ、もう行きますね」
「ああ、話してくれてありがとう。周りに気をつけてくれ」
「ありがとう。
 ……ヒースさん、いい人だな。目を見なければ話もできるみたいだし…私、少しは立ち直れたのかな…」

 ヒースは作者のお気に入りキャラです。アフアのしずくも彼に使ったことがあります。それに加えて目が黄色ですよね?もしや金色にも見えるのでは…と思った瞬間、支援スタートしました(笑)
 あと、微妙に恋愛チックになってますが…はい、狙いました。Bの後で彼の人柄に感化されてそうで「あのマークが?!」って感じでおかしくなります(酷)
 でもこの会話が発生する頃の彼女の年齢は一応16、いってても17才なんですよね。彼はいくつなんでしょうか;片方、特に女性が十代だと途端に犯罪の二文字が頭をよぎるから困りものです;



支援会話 マーク×ルセア

「!」
「ルセアさん!」
「あ…」
「ふう、危なかった。ルセアさん、ごめんなさい。私、うかつだった…」
「いえ、ありがとうございます。わたしの方こそ、お手を煩わせて申し訳ありません」
「そう気張らないで。なんか時々苦しそうだよ」
「お心遣い感謝します」
「…」
「…あの、どうなさいましたか…?」
「怖い?」
「! いえ、そんなことは…」
「いいのよ。大丈夫。剣さえとらなければ、血をかぶることはないから」


「あ、あの、マークさん…」
「ルセアさん?」
「先日、わたしに怖いかとお尋ねになったことですが…」
「…?」
「確かに、わたしは怖いと感じていました。あなたに降りかかった血を…恐ろしく思いました」
「でしょうね。…私の目と髪の色も、血に映えて怖かったでしょう?」
「申し訳、ありません…」
「慣れてるし、気にしないで。その事を謝りに来てくれたの?
 ありがとう。ルセアさんはいい人だね。でも、そんな事でわざわざ謝りに来なくていいんだよ」
「し、しかし…わたしは、自分を助けてくれた恩人を恐れてしまいました。神にも赦しを請わねばならないでしょう」
「やめてよ、もう。…赦しを願うのは私の方じゃない?」
「ですが…マークさんが何をしてきたのであれ、大勢の人を救っているのは事実です。わたしも、救われました。あなたは自らの罪を強く自覚しているからこそ、生きながら十分罪を償っていらっしゃるように思えます」
「やめてってば…。神の類は信じてないけど、そんなこと言ったら罰が当たるわ。そもそも罪を償うという行為に十分なんてあるの?」
「あ…も、申し訳ありません、無責任なことを…!」
「ううん、ごめんなさい。私も意地の悪いことを言った。でも、本当に思うんだよね…そういうこと。神は万人を救うと期待させておきながら、幸せになれる人を選別している。なんて不公平なんだろうって」
「マークさん…」
「あ、ルセアさんを責めてるわけじゃないの。気にしないでね」
「はい…」


「ルセアさん」
「マークさん…」
「この前はごめんなさい。今度は私が謝らなければならないんです」
「え…?」
「私は、教会でひざまずいて、他の人にも同じことをさせるだけで幸せになれると信じている教会の人間が嫌いだった…意地の悪いことを言うのがとめられなかった」
「そ、そんな…。わたしもマークさんのことを理解しないまま無神経なことを…」
「本当に、優しいんですね。
 私、考えたんですけど、神を信じていようがいまいが、幸せになれるのは結局その人次第なんじゃないかって思うんです。神を信じていれば一生安泰って思ってる人には、ばちがあたりますよね。反対に、神にすがっても現実を見据えて努力する人は成功を収める。 …これ、神を他の何かに置き換えても同じですよね。神がいるからこの世が不公平になったのではない。元々この世界は…どちらでもないんです。神は…関係ありません」
「マークさん…とても表情が穏やかになりましたね。きっと、何か迷いを断ち切ることができたのでしょう」
「怒らないの? 神は関係ないって言っても?」
「はい。その人にとって最良の答えを見つけることは、エリミーヌ教の教えにも説かれています。あなたは…とても、強い方なんですね」
「え、私が? そんなこと…初めて言われた。」
「わたしは強い方だと思います。自分のあらゆる欠点、苦しみに、逃げることなく向き合っていらっしゃいます」
「ルセアさん…。
 …ありがとう…私、もう行くから、気をつけてね」
「はい。お話どうもありがとうございまし」

 限りなく暗い悩みを抱える人間に、善良な修道士。これは話をさせないと損だ!と思い込んでつくってみました。
 マークは奇麗事が嫌いです。優等生的な発言も嫌悪します。醜い現実を直視し続けてきたため、リアリストの傾向があります。考えが老成しているともいいます。極度の期待は持ちません。
 それでもエリウッドについていったのは、リンとの友情、彼の人柄の危なっかしさに世話をやいた、など色々あって本人も説明がつかないと思います。
 Aのマークの考えは結構ありふれてますが、今後とも重要です。



支援会話 マーク×ニノ

「マーク!」
「あ、ニノ。どうしたの?」
「うん、ちょっとマーク、辛そうだなって思って…」
「そう? 私は別に普通だけど。ニノの方こそ、大丈夫なの?」
「へ、平気だよ…あたしだって、黒い牙だもん」
「無理はしないでね」
「マークこそ…、無茶しちゃだめだよ。
 …あ、あの…マーク…」
「何?」
「マークにとって、牙のみんなは敵なの…?」
「そんなことはない。今でもみんなのこと、好きだよ。
 でも、牙は…もう…人がいなくなりすぎた。なのに、まだどこかで割り切れてない。まだ、みんながいるようで…まだ、間に合うような気がして、諦めきれないんだ。まだ追っかけてる…」
「マーク… … …」
「ああこらこら、泣くんじゃない!こんなところで…」
「ごめん…なさい…ひっく…」
「…ニノは幸せだよ、私よりもずっと救われてる。私も泣きたいよ…」


「私に、できるだろうか…あなたのように、なれるだろうか…。ねえ、ロイド…」
「マーク、どうしたの?」
「!! え、いや別に…」
「ロイドにいちゃんのこと考えてたの?」
「ん…まあね。なんたって【白狼】の異名をとる【四牙】だもの」
「うん。にいちゃんたちの呼び名、かっこいいよね」
「そうそう。私もああいうのが欲しかったな」
「ふーん」
「あらニノ、その意味深な笑いは一体なあに?」
「マークの名前、にいちゃんたちが考えてたよ」
「え…? 私の…! それ、本当なの?! 何だって? 教えて!」
「ふふ。何個も候補があってね、【飛燕】と【紅雀】と【緋連雀】はどうかって言ってたよ。この中から決めるつもりだったみたい」
「あはは、全部鳥だね…燕とか雀とか……」
「マーク?」
「やっぱり駄目だよ、平気なふりしてあの人の話をするなんて、できないよ…」
「!」
「でも、教えてくれてありがとね。この名前、絶対忘れないから」
「マーク、もう泣いてもいいんだよ…あたしがその分がんばるから…」
「…」


「マーク、この前はごめんね…」
「何が?」
「マーク、牙を抜けて、ソーニャの部下に…それで、涙が出なくなったなんて…」
「ニノが泣くことじゃないよ。そんな顔しないで」
「でも、あたし泣いていいなんて、ひどいこと…」
「ニノ………。もう、私に優しくしなくていいのよ」
「え…?」
「そろそろ簡単に泣かなくなる強さを身につけてもらわないと、私としても困るんだ。日頃言っているじゃない。動揺を避けるためにも、私に話しかけることは控えてねって」
「でも…あたし…」
「あなたは私に依存してはいけないの。自立して生きて欲しいの」
「で、でも、あたし、マークと一緒にいたいよ!」
「聞いて。何度も牙として仕事をした私は顔が知れてしまっている。その上ベルン軍とも戦ったんだから、ここの軍師である私は当然有名になってしまう。だとしたら、これから先命を狙われるのは明らかでしょう? …表の世界で平和に生きることなんて、できない。
 でもニノにはまだ望みがある。仕事に手を染めなかった、王子を殺さなかったあなたなら、まだ生きられる」
「マーク…やだ、マーク…!」
「いいえ。ニノは生きる権利がある。それを捨てるなんて馬鹿な真似はやめて。私と一緒にいないで。だから…、もう話しかけないで。…さよなら」
「マーク、待って! 待ってよ、マーク!!」
「………」
「どうして、みんなあたしをおいてくの…? ジャファルも、同じこと言っていなくなったのに…」
「【死神】が…?!」
「あたし、もう一人はやだよ…なのに、どうして…?」
「……ニノを見てると…昔を思い出す」
「…」
「家族がいて、仲間がいて、ロイドもライナスも…」
「マーク…」
「でも、みんながいたあの家は、もうない。それを思い知らされるのは、私の弱さには辛すぎる…。だから、離れたかった。…それに、私といるとあなたに迷惑がかかる」
「そんなの…全然関係ないもんっ…」
「ニノ、お願い。この戦いまで。これだけは譲れない」
「…」
「返事は?」
「うん…」
「はい、よくできました。
 …ありがとう」
「うう…っく…ひく…」
「もう、泣いてばっかなんだから」
「マークの分も、泣いてるの…」
「…」

 段階ごとに違う話題の会話にしました。Cは昔を思い出してニノを泣かせるマーク(笑)、Bは懐古から立ち直ったかのように振舞うも挫折、Aで完全に手を切る。という流れです。
 補足するとBのはじめでマークが悩んでいたのは、黒い牙の再建を考えていたからとか、そんな裏話があります。ご存知の通り、結局やめるんですが。
 ニノの精神年齢は年の割に幼い印象を持っていた影響か、マークがお姉さん風を吹かせています。でもマークと年齢はほぼ変わらないので、ニノと双璧を成す牙のアイドルだったという妄想(笑)。首領の息子達直々に二つ名考えてもらってますし。でも二つ名って一体誰がつけてるんでしょうね…。



支援会話 マーク×ラガルト

「よ、マーク」
「ああ、ラガルト。変わりない?」
「見ての通りさ。しかしお前さん、すっかり軍師らしくなっちまったな」
「へへ、ありがと。…」
「どうした?」
「ううん…なつかしいなって思っただけ」
「そうか。まあ仕方ないな。俺だって思い出す、あの頃はよかったってな」
「うん…」


「マーク、何かあったか? やけにぼんやりしてるじゃねえか」
「うん…ちょっと考え事」
「へえ。噂の名軍師にも悩み事がおありか。一体何がそんなに心配なんだ?」
「う…いや、そんな…たいしたことじゃないよ。私を助けたのは誰なんだろうって…」
「…何だいそりゃ?」
「追手から深手を受けて…もう駄目だって諦めてた」
「…抜けた後の話か」
「うん。そこを誰かが拾ってくれて、私に軍師としての道を示してくれた師匠に預けた」
「マーク、そりゃ…」
「お礼が言いたいなってだけだよ。普通は絶対助けたりしないし。でも、そんなにちょくちょく思い出してるわけでもないのに、最近何故かよく考えるんだ。
 ま、今更その人に会っても分からないからいいんだけど。何か聞いてもらったら楽になったよ。もう平気だから、じゃあまた!」
「おいおい、こりゃどうしたもんかねえ…」


「うーん、ああは言ったものの、実はまだ思い出すなんて言えないなあ…。
 …ラガルトの【疾風】…思い出すのは、このせいかな…」
「マーク、ちょっといいか? この前言ってたお前を助けてくれた奴の話なんだが…」
「うん。何?」
「あっさりしてて悪いんだが、そいつは俺だよ」
「…」
「やっぱりって顔してるな。…気づいてたのか?」
「ううん。意識はほとんどなかったから、ラガルトだってすぐわかったわけじゃない。その時の記憶も無いし…」
「ああ、あの時のお前はこれ以上無いってぐらいぼろぼろで、生きる気力も感じられなかったな。だからいっそここで終わりにしてやろうかとも思った」
「…!」
「ひでえ話だろ? けどそれ程助かる見込みがなかったって事さ。きずぐすりでなんとかなる状態じゃねえ。強力な回復魔法があれば話は別かもしれない…が、そんな奴どこにいる? それで、気がついたら剣に手が伸びてたのさ」
「そっか…私、そんなに酷かったんだ…」
「でもよマーク。血がまだ残る自分の剣と虫の息のお前を見た時、俺は怖くなっちまったんだよ。また仲間を殺すのか、お前まではできねえ…ってな」
「…だから助けたの?」
「…怒ったかい?」
「……ううん。ラガルトの発想は暗殺者として自然なことだよ。殺そうとしたことも、怖くなったことも…。どっちも、よくわかる。だから責める気はないよ。それよりも…ありがとう」
「ん?」
「あの時、私は生きたいと思わなかった。このまま死んでも構わないと思ってた。でも、今は死ななくて良かったと心から思う。だから」
「しかしよ、マーク、俺は…」
「もういいの。私は生きてる。今はそれが嬉しいから」
「…そうかい。もういいのか」
「うん」

 同郷のよしみで、とか思ってこのネタを題材に支援会話をつくってみたのですが、彼を動かすのは難しいです;
 マークを助けた事は黙っていたラガルトですが、本人が気にしているのを見かねて自白(?)、怒るかという予想とは裏腹に『もういいよ』と言って許したマークを見て少しばかり肩の荷が下りた心持がするラガルトでした。という話です。
 なお、補足しておきますが恋は芽生えてません(笑)。



支援会話 マーク×ジャファル

「あ、あの…」
「…」
「何か、不足はないかしら? 無ければ別にいいんだけど…」
「…」
「…ごめんなさい。何も報告なんて、無い…よね…?」
「…」
「…じゃあさ、あの…」
「…何だ」
「!! いや…。何でもない。ごめんなさい」


「【死神】…」
「…」
「振り向いてくれるのね…。…安心したよ。正直、この名前で呼んでいいものか大分迷ったんだから」
「…」
「…この前はごめんなさい。本当は聞きたいことがあったのに、怖じけづいてしまって…」
「…」
「その…聞いていいのなら、続けるけど?」
「…構わない」
「あ、ありがとう。…あの……【死神】は…寂しくないの? 心がないってどんな感じ?」
「…」
「あ…私…そんなつもりじゃ…!
 ごめん、答えなくていいから…!」


「何度もごめんね、でももう一度だけ、話をしていい?」
「…」
「私は牙で初めて見た時から、あなたが怖くて仕方なかったの。でも、どうしても避けている事ができなかった。私…あなたが羨ましかったんだなって思った。何物にも怯えない強い心、何にも屈しない強い心が…。
 私は、凄く弱かったの。だから、人を超えた強い心を持つあなたが怖かった反面、…羨ましかった。あなたは痛みも恐れも感じないから。私は悪を容赦なく切り捨てる冷徹さが欲しかったから」
「…」
「でも…あなたは、変わった。いや、変わろうとしている。…自分がなろうとしている人間はこんなに弱い存在だよ、それでも人になる事をやめないの?」
「ニノの為なら弱くなっても構わない」
「…! それも…そんな強さも………
 ふぅ…。私は、強さを盲信していたみたい…」
「…」
「そんな強さも、あるものなんだね…。冷徹であることばかりが、強いことのように思ってた…。
 あなたにこんな形でこんな強さを教わるなんて思ってなかった。凄く……ありがとう」
「…」
「ふふ、いいのよ。何か答えようとしなくたって。もうわかったんだから。もう怖がる必要なんてないんだよね。
 私、今も弱いままだけど、その弱い心で弱いなりに、あなたが教えてくれた強さについて考えてみるよ。本当に、ありがとね」

 強さに固執するマークを知らないうちに諭すことになってしまったジャファル、の図(笑)
 もっと彼に何か言わせるべきかと思いましたが、無口が一番彼らしいというポリシーに基づき、黙っていてもらいました(おい)。殺人機械と自称する程の冷徹さを持つ彼にマーク、びびりまくりです。
 やっぱり根が優しい子ですから、自分から暗殺集団に居座ると決めたものの悩みは尽きなかったと思うんですね。その鬱屈した心を脱退後も引きずっていて…というコンセプトです。
 最後の方の台詞がいい子過ぎたか…?;


超短編その一

 さらさらと音を立てて吹き渡る風が、彼女には見えているのかと思った。
 「リン?」
 振り返ろうともせずに後ろの人間を言い当てた少女は、こういう妙な面が幾つもある。
 人の輪に入ろうとしないのに、引き入れられれば喜んで大騒ぎする。なのに度を過ぎたやかましさは徹底して忌避する。
 的確な助言をする軍師でありながら、常に戦線に躍り出て恐ろしいまでの活躍をする。
 身軽で体を動かすことが好きだという割には室内で本を読んだりこのように野外でぼーっとすることが多い。風を感じているのだと言うが、それが彼女にとって何の益をもたらすというのだろうか。
 サカの部族でもないのにそういうことをする人を、リンは見たことが無い。何度見ても珍しいな、と思う。
「慰めてくれる気がして」
「え?」
 涼しく柔らかな風を受けたその表情を、リンは窺い知ることはできない。いや、表情を知れたところで、マークが何を思い考え、憂えているのか、今のリンには分かりえない。
 相反する人間を一人に押し込めたような複雑な人格。それが彼女本来の優しさと正義感と、生来の環境と想いによる痛苦な板挟みから成ることも、無論。
 「ごめん、忘れて。何でもない」
 今、彼女は再び痛苦な板挟みに直面している。それを口にしないのは、恐怖と、彼女の優しさ故。
 重荷を抱えたまま、彼女はまた戦地に赴く。それがこの上ない危険な行動であることを、十二分に、承知しつつも。

 過去にこのサイトにあった掲示板に、削除防止として書き込んだSSをコピペして残しておきました。再公開するつもりはなかったのですが、このまま埋もれさせるのも勿体無い気がしてアップしました。
 イメージは、マークの物静かな一面を見ながら疑問を感じるリンです。
 草原の外からやってきた人間は、やはり彼女にとって珍しかったのではないでしょうか。また、マークは出身、家族、身分、仕事、その他諸々が全くの不明ですから不気味に思っても不思議ではありません。
 そんな彼女を受け入れ、自ら旅について行くと言ったリン。それでも違和感が拭えないリン。不安定な仲間を信じ続けた理由は、やはりほっとけなかったのでしょう。
 何であれ、赤の他人にここまで関心を持ってくれたことに、マークは内心嬉しさも感じていたはずです。


超短編その二

「やだよ、本当は」
 彼女は、血を好かないと言う。それは、苦痛や恐怖に呼応して流れる命の涙だと言う。
 その言葉に、私は驚いた。
 彼女にとって、血と涙は同義なのだ。
 闇に潜み、影の中から悪を成敗する役割を負っている彼女には、言ってはいけない程に不似合いな言葉だ。
「そぐわない、とか言う?」
 にんまりとした笑みを湛えながら彼女は問う。
 痛々しい――とは、言えない。とても、とてもそんなことは…。

 これも掲示板の削除防止から持ってきました。
 相手は特に決めていないので、各自でご自由にご想像下さい。この微笑みはマークの紹介ページにも載せてありますが、結構にんまりとかけ離れています。
 成敗する相手には色々な人がいた。全員自分が手にかけた。そういう負い目がこういう暗さを醸し出しているんです。
 でもそれができなければみんなと一緒にいられない。何より彼と一緒に…。とか悩みながら仕事をこなしていたんですね。

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